Item
XX DEVELOPMENT SURE'S "NERDS NAP for NERDS" AWESOME CREW NECK
1950年。街はビンスエブームです。
Tシャツは下着ではなくなり、若者のジーンズは強烈にセクシーで、ロケットみたいな車は単なる移動手段ではなく、アイデンティティーに変わりました。
機能で満たされていた時代は終わり、ただの合理性では説明がつかない製品が生まれます。アメリカが本気でモノづくりをしていた時代。
「こうでありたい」という意思が残っていて、より良い未来を信じる気持ちが街の雰囲気をつくっています。
そして、スウェットシャツもただの体操服からオシャレアイテムに変わりました… 笑
憧れのフリーダムスリーブ
丸胴ボディーの制約の中で、脇下に運動量を。これはアール・デコみたいな発明で、スウェット界隈で最も美しいディーテールです。
いつかAWESOMEスウェットでチャレンジしたい。ずっと夢でした。ビンテージからパターンを起こすとき、CADを使わずに鉛筆を使うことにしました。
「こうでありたい」と思ったカーブを同じ方法で描いてみたいと思ったのです。(*このアプローチのせいでとても時間がかかりましたが、気づけたことが多かったのでヨシとします)
実は、フリーダムスリーブにはもっと有名なメーカー(H社)がつくったものが存在します。一方、僕たちが参考にしたのは、モンゴメリーワードのもの。
きっと背景は1950年代後半です。ガゼットは前だけに省略されて、しかも上乗せに。(フラットロックで縫っているのが面白いのですが、文字数の都合でまた今度お話しします)
前だけに付けたイミテーションガゼットにもうすぐやってくる、大きな量産化の波を感じます。後発なので、何かを真似て作ったのは否定しませんが、シカゴ発のメールオーダーから始まった、量産のための会社でありながら、まだ理想を求めたデザイナーがいたことに感動しています。
それで、このフリーダムスリーブがとても好きな理由
このナロウな袖のカッティングはどこかヨーロッパの雰囲気が感じられて、間違いなく狙っている。デザイナーの仕業です。
お裁縫男子を長くやっていると、デザインという何かヨコシマなワードより、機能的、合理的、というワードに夢中になるのですが、それらが十分満たした上で、「こうでありたい」というナロウなカッティングは 「デザイン」として最高の位置にいます。
ここが、僕がこのスウェットを気に入っている一番のポイントで、このムードのまま、みんなに届けたいと思いました。
ドリームスペック W / V S / V
ひと通りパターンを描き終えた時、シングルガゼットで作る予定でした。ビンテージに無い仕様は作らない。いつもそうしています。
ただ、先述のデザイナーはどうしたかったのだろう?ということが頭をよぎりました。当然ダブルガゼットのことは知っていたでしょう。
それでも、コストのせいで断念しなければいけなかったのではないか。マネージャーに言われてフロントのガゼットだけは死守した。上乗せなら効率的ですとかなんとか言って。
きっとそうだろう。そして、シュアーメイトの事も考えました。みんなはどっちが良いんだろう。きっと中途半端は許してくれない。
さて、僕はどうするべきか。ポリシーを守るべきか、「デザイン」をするべきか…. 結果、両V。みんなのせいで、ドリームスペックが誕生しました。笑
Vとバインダー
いくつか持ってるビンテージから両V仕様のものを参考にして、設計しました。仕様としては1940〜50年代前半のもの。V型に切り込んだ身頃にV型のガゼットを縫い合わせます。
各社形状には違いがあって、Vが広いもの、Vが狭いものと様々ですが、フリーダムスリーブには断然ナロウVが似合う。しかもちょっとテーパーするように… Vの先から衿元にかけて少しフライスが広がる…狙っています!
そして、ここにかけるバインダーは2つ折り。比較的古いものに多い仕様で(時代が進むと3つ折りになります)その生地端は切っただけ。設備的な制約もあったんだろうけど、針幅も4ミリと細いものが多いです。
おかげで、専用ゲージを導入して再調整しました。本体内側がミシンでいう表側。つまり表に見えているのは、ミシンでいう裏側で… あぁややこしい。笑
そしてその裏側の糸は2本取で縫い上げるのがよくあるディーテール。ステッチ糸が配色になる、シルバラード、アルバラードではグッと存在感がある仕上がりになります。 絶対伸びるのに、絶対伸ばしたくないようにして作りますが、僕は、結局伸びちゃった後の方が好きです。
チェーンとダブルステッチ
この年代のスウェットシャツの地縫いにはチェーンステッチが使われています。アラスカに限らず、この時代はこの仕様が一般的だったようです。
まとめて地縫いをしておいて、一気にカバーステッチをかけるのが特徴で、”そこで曲がるんか!?”が面白い。
そして、ガゼットのカバーステッチにも注目して欲しいです。左上から入って右上に抜ける。これは前後ともに同じです。
折り返し地点では、針を抜いて糸を切らずに続けて縫う。正確には“編む”なんだけど。そうすると遊んでいる糸が出て、「ジーンズのアーキュエイトみたいな物だね」という見た目になりますが、「そんな単純じゃない!」と言っておきたいです。
W/Vじゃなかったら、もっと早く縫えたのに… ミシンの構造上ありえない方向に曲げるわけで、仕上がりもバラついて…
まるで膝を前に曲げるような仕様だけど、ガゼット裏には1950年代の世界が広がっています。
繰り返しますが、これはアメリカが本気でものづくりをしていた頃の、なんとも愛おしいディーテールです!
袖の形状
誰だってハッとするようなラグランのカッティングはまさに、完璧です。それなのに、袖の下側肘あたり、身頃脇下のマチの△と合体するあたりが凹んでいます。
これは、狙ってできた物では無いと思いますが、凹ませておくのが当然もよろしいかと思いまして。凹ませておきました。笑
裾リブのテンション
これが今回のキモですね。今までのどのスウェットよりもきつく設定しました。(ビンテージに合わせて)
“ロングでタイトなリブ”がボディーとのコントラストが生まれます。←かっこいい。
また、“ジャストサイズのスウェットはGジャンから出てはいけない” というオーセンティックなバランスを再提案したいと思います。
最近、Tシャツのタックインについて考える本が出ていますが、1950年のムードを考えたら、同じことが言えると思います。
サイズ選びであえて外すのは良いが、ジャストを選んだのであればこうであって欲しいというバランスに保てるようにしました
全サイズテストをしましたので、きっとバッチリなはずです。
5台の編み機と2本の糸
ニッター(メープルくんありがとう!)に頼んでサイズに合わせて5台の編み機を用意してもらいました。そこに、リブ用が2台。合計7台ですね。
旧式のシンカー編み機を使っています。この編み機たちは50年も前から、いろんなリクエストに応え続け進化を遂げてきました。
進化というのか、改造というのか… けして元に戻ることはないロングロードです。その途中、SUREのリクエストに応えて集めた5台です。
つまり、編み機毎に歴史が違うために、糸は同じでもサイズ毎に表情が違う。最高です。僕はこの手の話が大好きです。笑
僕たちは、ほんの一瞬シンカー編み機を借りただけ。専用機ではありません。このバリエーションがリアルであり、魅力的です。
そして、狙った仕上がり。ビンスエを表現するにはオレンジラベルのAWESOMEだと良すぎてしまう。
“HEAVY WEIGHT”“EXTRA WARMS”ってアピールして「え?ちょっと寒そうだけど…」くらいを狙いたい。ブランケットみたいなAWESOMEが作れるのに、あえてタオルくらいのNEW AWESOMEが必要なんて、正直、変態的だなぁと思って。
それに、多分誰も気づかないけど、表糸は2本なんだぜ! ただでせさえ、セッティングがややこしいのに。笑 今のところ、なんでなのかは理由もわからないけど、この時代のスウェットはみんなそうなんだ。
ナスビーのクルーネックがナイスナスビーに変わって、リブがいい感じに死んだ頃、違いが現れる….かどうかは分からないけど。笑とにかく、この生地には、変態的(NERDS)起毛(NAP)というのがピッタリなんだ!
WINCE染色機について
NASVY / BLACK / RED には、 ALASKA 同様に WINCE の“いたずら” が発生しています。
ワイルド ウィンス (WILD WINCE)
シワがはっきりとわかるものをセレクトしています。
マイルド ウィンス (MILD WINCE)
シワがわかりにくいものをセレクトしています。
*このシワは、染色の際にできたもので、折り目の谷部分が濃く染まることで“シワ”としてメモリーされています。箇所や濃淡には個体差があります。洗濯によってある程度は目立たなくなるかと思いますが、感じ方には個人差がございます。 これはビンテージにもみられる現象ですが、念の為、MILD と WILDに選別いたしました。 ご理解のうえ、ご注文いただけましたら幸いです。
*シルバラードのついては、糸を作る段階で色味を作っていますので、マイルドとワイルドの振り分けはございません。
最近思うことがあります。
僕たちが変態な方が、人を幸せにできる。
NERDS NAP for NERDS, by NERDS.
最後まで読んでくれてありがとう。
ぜひ買ってください。
Tシャツは下着ではなくなり、若者のジーンズは強烈にセクシーで、ロケットみたいな車は単なる移動手段ではなく、アイデンティティーに変わりました。
機能で満たされていた時代は終わり、ただの合理性では説明がつかない製品が生まれます。アメリカが本気でモノづくりをしていた時代。
「こうでありたい」という意思が残っていて、より良い未来を信じる気持ちが街の雰囲気をつくっています。
そして、スウェットシャツもただの体操服からオシャレアイテムに変わりました… 笑
憧れのフリーダムスリーブ
丸胴ボディーの制約の中で、脇下に運動量を。これはアール・デコみたいな発明で、スウェット界隈で最も美しいディーテールです。
いつかAWESOMEスウェットでチャレンジしたい。ずっと夢でした。ビンテージからパターンを起こすとき、CADを使わずに鉛筆を使うことにしました。
「こうでありたい」と思ったカーブを同じ方法で描いてみたいと思ったのです。(*このアプローチのせいでとても時間がかかりましたが、気づけたことが多かったのでヨシとします)
実は、フリーダムスリーブにはもっと有名なメーカー(H社)がつくったものが存在します。一方、僕たちが参考にしたのは、モンゴメリーワードのもの。
きっと背景は1950年代後半です。ガゼットは前だけに省略されて、しかも上乗せに。(フラットロックで縫っているのが面白いのですが、文字数の都合でまた今度お話しします)
前だけに付けたイミテーションガゼットにもうすぐやってくる、大きな量産化の波を感じます。後発なので、何かを真似て作ったのは否定しませんが、シカゴ発のメールオーダーから始まった、量産のための会社でありながら、まだ理想を求めたデザイナーがいたことに感動しています。
それで、このフリーダムスリーブがとても好きな理由
このナロウな袖のカッティングはどこかヨーロッパの雰囲気が感じられて、間違いなく狙っている。デザイナーの仕業です。
お裁縫男子を長くやっていると、デザインという何かヨコシマなワードより、機能的、合理的、というワードに夢中になるのですが、それらが十分満たした上で、「こうでありたい」というナロウなカッティングは 「デザイン」として最高の位置にいます。
ここが、僕がこのスウェットを気に入っている一番のポイントで、このムードのまま、みんなに届けたいと思いました。
ドリームスペック W / V S / V
ひと通りパターンを描き終えた時、シングルガゼットで作る予定でした。ビンテージに無い仕様は作らない。いつもそうしています。
ただ、先述のデザイナーはどうしたかったのだろう?ということが頭をよぎりました。当然ダブルガゼットのことは知っていたでしょう。
それでも、コストのせいで断念しなければいけなかったのではないか。マネージャーに言われてフロントのガゼットだけは死守した。上乗せなら効率的ですとかなんとか言って。
きっとそうだろう。そして、シュアーメイトの事も考えました。みんなはどっちが良いんだろう。きっと中途半端は許してくれない。
さて、僕はどうするべきか。ポリシーを守るべきか、「デザイン」をするべきか…. 結果、両V。みんなのせいで、ドリームスペックが誕生しました。笑
Vとバインダー
いくつか持ってるビンテージから両V仕様のものを参考にして、設計しました。仕様としては1940〜50年代前半のもの。V型に切り込んだ身頃にV型のガゼットを縫い合わせます。
各社形状には違いがあって、Vが広いもの、Vが狭いものと様々ですが、フリーダムスリーブには断然ナロウVが似合う。しかもちょっとテーパーするように… Vの先から衿元にかけて少しフライスが広がる…狙っています!
そして、ここにかけるバインダーは2つ折り。比較的古いものに多い仕様で(時代が進むと3つ折りになります)その生地端は切っただけ。設備的な制約もあったんだろうけど、針幅も4ミリと細いものが多いです。
おかげで、専用ゲージを導入して再調整しました。本体内側がミシンでいう表側。つまり表に見えているのは、ミシンでいう裏側で… あぁややこしい。笑
そしてその裏側の糸は2本取で縫い上げるのがよくあるディーテール。ステッチ糸が配色になる、シルバラード、アルバラードではグッと存在感がある仕上がりになります。 絶対伸びるのに、絶対伸ばしたくないようにして作りますが、僕は、結局伸びちゃった後の方が好きです。
チェーンとダブルステッチ
この年代のスウェットシャツの地縫いにはチェーンステッチが使われています。アラスカに限らず、この時代はこの仕様が一般的だったようです。
まとめて地縫いをしておいて、一気にカバーステッチをかけるのが特徴で、”そこで曲がるんか!?”が面白い。
そして、ガゼットのカバーステッチにも注目して欲しいです。左上から入って右上に抜ける。これは前後ともに同じです。
折り返し地点では、針を抜いて糸を切らずに続けて縫う。正確には“編む”なんだけど。そうすると遊んでいる糸が出て、「ジーンズのアーキュエイトみたいな物だね」という見た目になりますが、「そんな単純じゃない!」と言っておきたいです。
W/Vじゃなかったら、もっと早く縫えたのに… ミシンの構造上ありえない方向に曲げるわけで、仕上がりもバラついて…
まるで膝を前に曲げるような仕様だけど、ガゼット裏には1950年代の世界が広がっています。
繰り返しますが、これはアメリカが本気でものづくりをしていた頃の、なんとも愛おしいディーテールです!
袖の形状
誰だってハッとするようなラグランのカッティングはまさに、完璧です。それなのに、袖の下側肘あたり、身頃脇下のマチの△と合体するあたりが凹んでいます。
これは、狙ってできた物では無いと思いますが、凹ませておくのが当然もよろしいかと思いまして。凹ませておきました。笑
裾リブのテンション
これが今回のキモですね。今までのどのスウェットよりもきつく設定しました。(ビンテージに合わせて)
“ロングでタイトなリブ”がボディーとのコントラストが生まれます。←かっこいい。
また、“ジャストサイズのスウェットはGジャンから出てはいけない” というオーセンティックなバランスを再提案したいと思います。
最近、Tシャツのタックインについて考える本が出ていますが、1950年のムードを考えたら、同じことが言えると思います。
サイズ選びであえて外すのは良いが、ジャストを選んだのであればこうであって欲しいというバランスに保てるようにしました
全サイズテストをしましたので、きっとバッチリなはずです。
5台の編み機と2本の糸
ニッター(メープルくんありがとう!)に頼んでサイズに合わせて5台の編み機を用意してもらいました。そこに、リブ用が2台。合計7台ですね。
旧式のシンカー編み機を使っています。この編み機たちは50年も前から、いろんなリクエストに応え続け進化を遂げてきました。
進化というのか、改造というのか… けして元に戻ることはないロングロードです。その途中、SUREのリクエストに応えて集めた5台です。
つまり、編み機毎に歴史が違うために、糸は同じでもサイズ毎に表情が違う。最高です。僕はこの手の話が大好きです。笑
僕たちは、ほんの一瞬シンカー編み機を借りただけ。専用機ではありません。このバリエーションがリアルであり、魅力的です。
そして、狙った仕上がり。ビンスエを表現するにはオレンジラベルのAWESOMEだと良すぎてしまう。
“HEAVY WEIGHT”“EXTRA WARMS”ってアピールして「え?ちょっと寒そうだけど…」くらいを狙いたい。ブランケットみたいなAWESOMEが作れるのに、あえてタオルくらいのNEW AWESOMEが必要なんて、正直、変態的だなぁと思って。
それに、多分誰も気づかないけど、表糸は2本なんだぜ! ただでせさえ、セッティングがややこしいのに。笑 今のところ、なんでなのかは理由もわからないけど、この時代のスウェットはみんなそうなんだ。
ナスビーのクルーネックがナイスナスビーに変わって、リブがいい感じに死んだ頃、違いが現れる….かどうかは分からないけど。笑とにかく、この生地には、変態的(NERDS)起毛(NAP)というのがピッタリなんだ!
WINCE染色機について
NASVY / BLACK / RED には、 ALASKA 同様に WINCE の“いたずら” が発生しています。
ワイルド ウィンス (WILD WINCE)
シワがはっきりとわかるものをセレクトしています。
マイルド ウィンス (MILD WINCE)
シワがわかりにくいものをセレクトしています。
*このシワは、染色の際にできたもので、折り目の谷部分が濃く染まることで“シワ”としてメモリーされています。箇所や濃淡には個体差があります。洗濯によってある程度は目立たなくなるかと思いますが、感じ方には個人差がございます。 これはビンテージにもみられる現象ですが、念の為、MILD と WILDに選別いたしました。 ご理解のうえ、ご注文いただけましたら幸いです。
*シルバラードのついては、糸を作る段階で色味を作っていますので、マイルドとワイルドの振り分けはございません。
最近思うことがあります。
僕たちが変態な方が、人を幸せにできる。
NERDS NAP for NERDS, by NERDS.
最後まで読んでくれてありがとう。
ぜひ買ってください。







